vol.340(9月11日)
★★・‥…―━━━―…‥・・‥…―━―…‥・・‥…―━━━―…‥・★★◎ 地政学的重要度増すパプアニューギニア 米国も熱視線(2023.8.31、Yahoo/Wedge )
https://news.yahoo.co.jp/articles/81eead5587a30b47dcc8167d8052d78e038cc474
英エコノミスト誌(電子版)の7月30日付け解説記事
‘Why the world is suddenly wooing Papua New Guinea: Its poor,
troubled islands return to the forefront of the big powers’ strategic thinking’が、
世界は突然パプアニューギニアに接近しているとして、同国の地政学的位置などその背景を論じている。
主要点は次の通り。
・パプアニューギニアの港ポートモレスビーが、かつてなく軍事的な注目を集めている」。
日本の海自最大の艦船「いずも」や英海軍巡洋艦「タマー」が7月上旬に訪問。
またフランス海軍の「ラ・グロリューズ」も今年に入り訪問、8月には米沿岸警備艇が訪問予定だ。
・新たな地政学の時代になり、パプアニューギニアは重要性を取り戻している。
第一の理由は、地理的位置だ。同国は米の主要軍事拠点のグアムに近く、豪州への道を支配する。
第二に、これまでの金に加えて、電池に使用されるニッケルや銅、環境革命に必要な鉱物資源がある。
米仏企業の協力を得て液化天然ガス(LNG)の主要な輸出国となっている。
第三の理由は、同国が太平洋島嶼国フォーラム(PIF、18カ国の大洋州地域組織)の主要国であることだ。
・米国は5月にパプアニューギニアと安全保障協力協定に署名、2022年の中国・ソロモン諸島協定への目覚ましい反撃となった。
米国は、同国のラエやマヌス島での基地建設などを支援するとともにそれらへのアクセスを期待している。
・米の一連の対中対抗策は目覚ましい成果を達成した。
ただし、これは「北大西洋条約機構(NATO)のアジア版」のごときものではない。
紛争の際の対米支援を確約するものでもない。
それでも、今かかる努力をしておくことは将来の同盟国動員の可能性を高める。
それは中国にとり不確実性を高めるものだ。
* * *
このエコノミスト誌の分析は穏当だ。特に米・パプアニューギニア協定締結は、
その迅速さとサプライズ性、パプアニューギニアの選択などで米国の本気度を示す。
当然ながら、22年の中国・ソロモン協定締結は米国にとってよほど衝撃的だったものと思われる。
ブリンケン国務長官がパプアニューギニアやトンガ(中国の存在が増大。5月米大使館開設)を、
オースティン国防長官がパプアニューギニアや豪州を訪問したことは良かった。
中止になったバイデンの大洋州訪問も、いずれ実現すべきだ。
中国が築いている関係を一挙に直すことは難しいが、それをイーブンにしておくことは重要である。
なお、米国との協定にはパプアニューギニア国内に一部反対もあるようであり、
それが同国のマラペ首相のやや不明瞭な発言や米国の慎重な発言に繋がっているのかもしれない。
マラペは、われわれは全ての国の友人であり、どの国の敵でもないと言い、
「われわれは戦争ではなく平和と寛容を支持し、民主主義やキリスト教との共存も促進したい」と述べた。
オースティン国防長官は、「米国はパプアニューギニアに恒久的な基地を求めているわけではない」と説明している。
中国ににらみを利かせられる好立地
パプアニューギニアについては、特に地理的重要性とPIFの重要国との二点が重要なように思える。
同国は米軍アセットや兵站の分散に資することができる。
更に同国は中国の南太平洋への入り口に位置しており(ラエはソロモン海に、マヌス島は太平洋に面する)、
ソロモン諸島やキリバスなどへのアクセスをにらむことも可能になる。
南シナ海やマラッカ海峡を通る中国のシーレーンからも遠くない。
完成近いと見られるカンボジアのリアム海軍基地の中国使用への牽制にもなり得るだろう。
域内で良い動きもある。インドのモディ首相が第三回印・太平洋島嶼国協力フォーラム出席のため5月に、
インドネシアのジョコ大統領が7月上旬にパプアニューギニアを訪問(両国には西パプア問題もあり興味深い)した。
更に、次のような動きも目を引く。7月24~28日にはフランスのマクロン仏大統領がニューカレドニア、バヌアツ、
パプアニューギニア、スリランカを訪問した。報道によればフィジー首相は、転倒事故を理由に7月下旬の訪中招請を断った。
日本も、関係国と連携し活動を強めていくことが重要である。林外相は今年3月ソロモン諸島、クック諸島を訪問した。
いずれ総理の大洋州訪問も実現すべきだろう。上記の記事でも触れられている護衛艦「いずも」の寄港も有意義だった。
経済協力も強化していくべきだ。
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◎ 米中が太平洋島しょ国をめぐって勢力争い 太平洋戦争で日米が戦った地域が、
なぜいま注目を集めるのか(2023.8.31、NHK)
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/487240.html
かつて太平洋戦争で、日米が激戦を繰り広げた太平洋の島々。
いま、この島々をめぐって、アメリカと中国の勢力争いが激しさを増しています。
なぜ、米中両大国がこの地域に注目しているのか、そして、日本は、この地域にどう関与していくべきなのでしょうか。
太平洋島しょ国は、赤道を挟んで位置する島々で構成される14の国と地域です。
地域最大の国はパプアニューギニアで、人口はおよそ1000万人。そのほかの国は人口が100万人に達しない比較的小規模な国です。
これまでは、アメリカ、オーストラリア、日本などとの関係が深く、中国の足がかりは小さいとみられていました。
激震が走ったのは、去年4月、ソロモン諸島が中国と安全保障協定を結んだことです。
両国政府は協定の内容を明らかにしていませんが、オーストラリアのメディアは、
▼ソロモン諸島が中国に軍や警察の派遣を求めたり、
▼中国の船舶がソロモン諸島を訪問して、補給を行ったりすることができる内容が盛り込まれていると報じました。
ことし7月、中国の習近平国家主席は、北京で、ソロモン諸島のソガバレ首相と会談し、
日本政府の関係者は、会談の中では、安全保障協定の運用に向けた協議も行われたとみています。
こうした安全保障面での関係強化が影響したとみられる、日本にとっては心配な事案が起きています。
8月24日、東京電力は、福島第一原子力発電所にたまる、トリチウムなどの放射性物質を含む処理水を薄めた上で、
海への放出を始めました。
外務省によりますと、日本政府は事前に、すべての国に直接、出向いて説明を行い、これまでのところ、
13の島しょ国からは明確な反対の声は出ていません。その一方で、ソロモン諸島のソガバレ首相は、
「放出は、人々や海洋、経済、暮らしに影響を与えるもので、強く抗議する」という声明を出し、中国と足並みをそろえる形となりました。
中国は、国交のあるそのほかの国々にも、ソロモン諸島と同様の安全保障協定の締結を働きかけています。
こうした状況にアメリカは危機感を強めていて、巻き返しに出ています。
バイデン大統領は、去年9月、この地域の14の国と地域の首脳などを招いた初めての会議を開き、
中国に対抗していくため、8億1000万ドル、日本円にして、1100億円あまりの支援を表明しました。
また、ことし5月、ブリンケン国務長官は、ソロモン諸島の隣国、
パプアニューギニアを訪れて、防衛協力協定に署名しました。協定は、現地政府が認める施設や区域を、
アメリカ軍が使用できるというもので、海軍基地や空港、港湾施設などが候補にあがっています。
7月には、オースティン国防長官も現地を訪れて、協定について協議を行い、期限が15年であることや、
9月にもアメリカ軍が使用できる施設について具体的な調整を始めることなどを明らかにしました。
(なぜいま、島しょ国なのか)
太平洋島しょ国をめぐって、なぜいま、米中が勢力争いをしているのでしょうか。
一連の動きの引き金となったのは、中国がソロモン諸島をはじめ、地域への関与を強めたことですが、
これについて、日米の当局者は、中国軍が、この地域の軍事戦略上の利点を2つの面から着目したからだとみています。
1つは、グアム、ハワイへのけん制です。
台湾海峡で不測の事態が起きた場合、アメリカ軍は、インド太平洋軍が司令部を置くハワイ、
そしてグアムなどを拠点に対応するものとみられています。
中国軍が、グアムに対し、中国本土とは逆の方向から活動できるとすれば、大きなけん制になります。
さらに、ロイター通信によりますと、
中国は、ハワイの南西に位置するキリバスのカントン島の滑走路の改修支援を働きかけているということです。
外務省幹部は、「この地域で中国軍が活動すれば、アメリカ軍は、警戒監視に余分なリソースを割く必要があるだけでなく、
ハワイとグアムを結ぶラインの背後を脅かされているという圧力を感じるだろう」としています。
中国軍が着目するもう1つの戦略的な利点は、オーストラリアやニュージーランドへのけん制です。
特に、オーストラリアは、中国を念頭に抑止力の強化に取り組んでいて、原子力潜水艦の導入も計画しています。
アメリカ国防総省によりますと、中国は、ソロモン諸島に続いて、
その隣国のバヌアツとも同様の協定を締結しようと働きかけを強めているということです。
およそ80年前、旧日本軍は、ソロモン諸島のガダルカナル島に進出し、アメリカ軍との間で熾烈な戦いを繰り広げました。
オーストラリアがアメリカの反攻作戦の拠点になるとみたことが背景にあり、
周辺はオーストラリアをにらんだ戦略上の要衝です。
ニュージーランドは、ことし8月、初めてとなる国家安全保障戦略を発表しました。
この中では、「中国は、この地域で、港や空港の開発を支援する取り組みを行っているが、
これらは、将来的に、軍民共用か軍専用の施設になる可能性があり、
地域の戦略バランスを根底から覆すことになる」として、強い警戒感を示しています。
(太平洋戦争を研究する中国)
こうした中、ことし1月、アメリカのシンクタンクが発表した1本のレポートが注目を集めました。
戦略予算評価センターの上席研究員で、中国海軍の研究で知られるトシ・ヨシハラ氏が、
中国の国防大学や軍事科学院などで発表された論文を分析した「太平洋戦争から中国が得た教訓」というレポートです。
ヨシハラ氏は、中国で太平洋戦争の研究がさかんに行われていることについて、
「中国軍は、世界一流の軍隊を目指すにつれて、他の大国と対等に戦うことが期待されている。
太平洋戦争は、冷戦後の紛争より、中国軍に核心に迫る考察を与えるのだろう」としています。
そして、ガダルカナル島での戦いを分析した中国の論文は、特に補給面に注目しており、
前線基地の確立と、物資を運搬できる船舶などの必要性に言及しているということです。
軍と関係の深い機関で行われたこれらの研究が、
中国がこの地域の戦略上の重要性に着目するきっかけになったのかもしれません。
(これからの展開)
では今後、この地域での米中の勢力争いはどうなっていくのでしょうか。
両国とも、この地域への関与を強める姿勢を示していることから、争いは激しさを増していきそうです。
日本政府の関係者は、短期的には、一部の国で中国の影響力が強まるのは避けられないだろうとみています。
ただ、ここにきて島しょ国からは、中国に対する警戒感が出てきているほか、
多くの国は、大国同士の争いに巻き込まれたくないというのが本音です。
日本は、1997年から3年に1度、この地域の首脳らを集めて、太平洋・島サミットを開催し、
来年も予定されています。防衛省も、毎年、海上自衛隊の艦船をインド太平洋諸国に派遣して、
訓練を行ったり交流を図ったりしていますが、ことしは太平洋島しょ国に重点を置いています。
多くの島しょ国からは、日本の「自由で開かれたインド太平洋」戦略に評価が寄せられています。
これまでの質の高いインフラ支援に加えて、沿岸警備などの能力向上支援や安全保障分野の交流などを進めて、
法の支配にもとづく海洋秩序への協力を求めていく必要があるでしょう。
(まとめ)
太平洋島しょ国に足がかりを得ようとする中国の取り組みが、将来、戦力の大規模な展開につながるかどうかは、
冷静にみていく必要があります。ただ、中国軍がより遠方で作戦を行えるよう取り組んでいるのは間違いありません。
この地域が、80年前のような戦いの場ではなく、平和な海域でありつづけるためにはどうすればいいのか。
日本の戦略的な取り組みがこれまで以上に求められています。
この委員の記事一覧はこちら
梶原 崇幹 解説委員
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◎ Japan-related books donated to university (2023.9.1、The National)
https://www.thenational.com.pg/japan-related-books-donated-to-university/
THE Japanese Nippon Foundation donated 157 Japan-related books
to the Papua New Guinea University of Technology (Unitech) in Lae yesterday.
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◎ Minister unveils measures amid Japan wastewater release -(2023.9.4、The National)
https://www.thenational.com.pg/minister-unveils-measures-amid-japan-wastewater-release/
Minister unveils measures amid Japan wastewater release – The National
FOLLOWING the beginning of the discharge of wastewater
from Japan's Fukushima power station, Minister for Fisheries and Marine Resources, ...
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◎ 住友林業・光吉敏郎社長「森林経営で創る脱炭素社会」(2023.9.5、日経ESG)
https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00006/083100308/
「事業の循環」を柱とする森林経営で脱炭素社会の実現に貢献する。森林ファンドを立ち上げ、
先端モニタリングや泥炭地の保全技術など多角的に取り組む。
2022年2月に、長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を発表しました。どう実践していますか。
光吉 敏郎 氏(以下、敬称略) 長期ビジョンは、
「森と木の価値を最大限に活かした脱炭素化とサーキュラーバイオエコノミーの確立」を事業方針の1つに掲げ、
脱炭素社会の実現を目指して策定しました。
当社は事業を通じて3つの価値を提供していきます。1つ目は「地球環境への価値」です。
森林には多くのCO₂を吸収する機能があります。森林を健全に整備してより多くのCO₂を吸収できるようにし、
長期にわたり炭素を固定できる優良な木造建築を世界中に広げていきます。
これにより森林が水を保つ力を維持し、生物多様性の保護にも注力します。
2つ目は「人と社会への価値」です。植林から木材の製造、加工、流通、建築など一連の事業を通じて、
社会に価値を提供していきます。
パプアニューギニアでは3万haを超える規模で植林事業を進めています。
周辺地域のために医療施設や教育施設を造り、住民と協力運営することで地域のコミュニティに貢献しています。
インドネシアでは「社会林業」も進めています。
現地の農業従事者に木の苗を提供して育ててもらい、数年後に木材として市場価格で買い取ります。
従来型の農業とは異なる新たな収入機会を提供するとともに、木材の安定調達を図る仕組みです。
国内では、全国で約20カ所の介護施設を運営しています。
高齢化社会のニーズを満たす社会的価値の提供を目指します。
3つ目が「市場経済への価値」です。1つ目と2つ目の価値を提供することで、企業としてもしっかり利益を出し、
従業員や株主を含むあらゆるステークホルダー(利害関係者)に報酬や配当という形で貢献します。
脱炭素設計を標準化
脱炭素社会に向けた今後の事業計画について説明してください。
光吉 住友林業グループは、「川上」の森林事業から「川中」の製造・流通事業、
「川下」の建築事業に至るまで、国内外で幅広く展開しています。
川上の事業は森林経営です。「切ったら必ず植える」循環型森林ビジネスを加速させます。
当社は国内外で約29万haの森林を保有していますが、これを30年までに50万haまで拡大する計画です。
川中の事業の中心は「ウッドチェンジ」の推進です。スギやヒノキなどの優良な国産材を活用し、
鉄骨やコンクリートに負けない競争力のある木材製品を生産します。
コンクリートの建物を木造に替えることで、CO₂排出量を減らします。
川下の事業では「脱炭素設計のスタンダード化」を進めます。3階建てビル(1500m2)でシミュレーションすると、
木造の場合、鉄骨で建てるよりCO₂排出量を45%削減できるというデータがあります。
様々な建設資材を木材に替えるウッドチェンジを進めていくことで、事業を通じて環境負荷の低減に貢献していきます。
建設業においては建築物を木造化し、末永く使います。その証左として、
住友林業の家は「60年保証」を実現しています。
≪この記事は長いので、全文は上記URLをクリックして閲覧願います≫
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◎ パプア、エルサレムに大使館 米国などに続き5カ国目(2023.9.7、日経)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB078MP0X00C23A9000000/
【シドニー=時事】太平洋の島国パプアニューギニアは5日、在イスラエル大使館をエルサレムに開設した。
両国の首相が出席して開所式が行われ、パプアのマラペ首相は「われわれキリスト教徒にとって、
エルサレムをイスラエルの普遍的な首都と認めることなくして神への敬意は完結しない」と述べた。
エルサレムに大使館を設置したのは、米国などに続き5カ国目。パレスチナがエルサレムの一部領有権を主張しているため、
日本を含む多くの国は商都テルアビブに大使館を置き、パプアもこれまでテルアビブに領事館を設けていただけだった。
イスラエルのネタニヤフ首相は「誇りに思うし、感謝している」と歓迎した。
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